「旅芸人の記録」が第一番

今週のお題「心に残る映画」

映画といってもアクションものやコメディーなどそのジャンル分は様々だ。

そうして映画は大衆芸能の一つだが、芸術の域に到達しているものもる。

黒沢作品も大衆芸能と芸術という性質を混ぜ合わせたり行き来したりして創作しているようだ。
どですかでん」などは芸術性の高い作品だが、大衆がついて行けず(理解できず)興行側と興業としては流行らなかった。

芸術性の高い作品の第一位は、私の知る限りでは、ギリシャ映画の「旅芸人の記録」がダントツだと思う。

映画は画像と音響とドラマ性(お話)の要素をまとめて作られているが、「旅芸人」は、まず映像としても無駄ない。画面の絵画的構図も計算されていて、空間が緊張観を持っている。色調も意図的に全体を渋めにして色が溢れるような鮮やかさも操作して配置している。

音響も、無言無音の効果も上手く使っているし、物事の音と、バックの音楽と言葉の音も無駄がなく、計算しつくされた整合があり、緊張感と効果がいかんなく表現に生かされている。

ドラマ性としても、主人公がどったらこったらという大衆映画の常套手法を離れて、旅芸人一座の講演と生活の歴史を通して、民族芸能と政治、戦争、反抗、文化、男と女などなど、壮大なスケールを持って芸術性を掘り下げている。

映画を好きな人、というより「好き嫌い」の評価基準を超えた人には、是非見て貰いたい映画だ。

作り手なら尚更だろう。

ところが残念ながら日本映画の作り手たちにその臭いがないことは、すでにその未来も示しているだろう。